ROUTE66 ART BOOK
〜あこがれのマザーロード〜
刊・ヤエスメディアムック 2022/8/31発売

 

アメリカにひかれ続けた50年-----
イラストレーターとして仕事を始めてからあとわずかで50年になる。フリーになった当時は西海岸ブームで、アメリカに関するモノや風俗、スポーツを描く仕事が多かった。もともとアメリカ的なものが好きだったからかもしれない。なぜアメリカが気になるのか、アメリカの何が好きなのかと言われても明確には答えられない。幼いころ見ていたアメリカ製のTV ドラマや映画、若いころの音楽、クルマなどへの興味がそのまま積み重なってきたからだろうと思う。
最初に接したアメリカは子供のころ見たTV ドラマだった。TV 放送が本格化したころ私は小学生で、わが家にはTVがあり、毎晩町内の子供たちが集まって「月光仮面」と漫画映画「ポパイ」を見た。しばらくするとアメリカ製のTVドラマがたくさん放映されるようになる。両親はあれこれ口うるさいわりに子供の夜更かしには寛大で、夜遅くに放送される「アンタッチャブル」、「サンセット77」、「ハイウェイ・パトロール」など大人向けのドラマのほとんどを見せてくれた。キスシーンやビキニの女性が登場するシーンでは家族全員が凍りついたものだ。そんなアメリカのTV ドラマのひとつに「ルート66」があった。若い男がふたり、今でいう自分探しの旅の途中で苦悩し、また旅を続ける…そんな内容を知ったのはずっとあとで、当時はかっこいいスポーツカーが走る姿が見られれば満足だった。「コンバット」や「ララミー牧場」、「逃亡者」など熱心に見たドラマはほかにもあったのに、なぜ「ルート66」がずっと心に残ったのだろう。ルート66 を紹介するTV 番組や書物に接するたびに角の丸いTV 画面が浮かび、仕事で描く絵の中にC1コルベットをそれとなく登場させたりしながら、自分の中の「ルート66」はずっと続いていた。

8州にまたがるルート66。カンザス州はほんの少しかすめるだけで、通過するのはあっという間。州ごとに風土も地形も土の色も違う。途中、キューバ、レバノン、マイアミという名の街があり、少し不思議な気がする。テキサスまでは緑の多い、ゆるやかな起伏があり、テキサスから西は、むかし西部劇でよく見た荒野が広がっている。

佐原輝夫 / Telly Sahara

さはら・てるお
1952年 長野県松本市生まれ。
子供のころから絵が好きで、勉強そっちのけでチラシの裏に落書きばかりしていた。音楽も好きで、音大受験の準備をしていた高校3年の秋、 イラストレーター穂積和夫先生の名著「自動車のイラストレーション」に出会い、やはり絵で生きたい!と方向転換。1971年 美大へ進むものの経済的理由で半年でやめる。1974年 デザイン会社勤務を経て独立。アメリカ西海岸ブームのなか、アメリカ的なモチーフ、アウトドアライフ、スポーツ、クルマ、音楽など多くのジャンルで執筆した。Tellyさんと呼ばれるのは、初のアメリカ取材のおり、相手から「テルオ」は言いにくい、と勝手にテリーと呼ばれたのがきっかけ。Terryは既に大御所がいらしたため、Telly表記になった。2001年 トヨタ博物館で企画展「佐原輝夫の世界」開催。2009年〜 イラストレーター、カーデザイナー7名による自動車アート7人展を開催。AAFオートモビルアート連盟会員「新冒険手帳」(主婦と生活社:かざまりんぺい著、挿絵:佐原輝夫)「STRADA:星野一義 イラストブック」(三栄書房)昭和女子大学環境デザイン学科プロダクトデザインコース非常勤講師(2011年〜)
 

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